この内容は、2020年11月27日に開催されたACDC(自動組版普及委員会)主催WEBセミナーで発表した「効果を生み出す自動組版のと利入れ方」の内容を記事にしたものです。
DOT3は制作フロー全体をカバーする仕組みなのですが、今までのDTP制作・編集のワークフローからのいきなりのシステム化は、登山をしたことがない人がエベレストに挑戦するような感覚かもしれません。
そこで、今回は、自動組版クラウドサービスDOT3を使って、自動組版を段階的あるいは部分的に導入していくという方法をいくつかお話ししたいと思います。
DOT3は、原稿作成から印刷入稿データ作成までをワンパックにしたクラウドサービスです。
これはこれで、効率化を極限まで追求した仕組みなので、ワークフローを一気に置き換えて、世界を変えてしまうぐらいのインパクトがあります。
しかし、今まで制作をやってきた私たちも含めたDTP担当にとっては、分からないことや不安だらけですね、きっと。
・どこから手をつけたらいいの?
・ほんとに効率化されるのか?
・デザイン性は失われるの?
・色々ルールがあるんだけどそれが出来るの?
などなど…沢山の「?」でなかなか導入できないのではないかと思います。
これでは自動化・効率化したくてもいつまでたっても自動組版化は進まず、データを活用する現世から取り残されてしまいます。
また、出来る人がいなくなって(入ってこない)、残された人は年をとり、苦労はさらに増える、という未来は容易に想像できます。
そこで、DOT3を活用しながら出来るいくつかの自動化・効率化の入り口を考えてみました。
まずは、ここから始めて、自分たちの想う自動化への道を進めてみてはいかがでしょうか?
1) DOT3で原稿を集める(原稿収集・整理の効率化)
2) ExcelをDOT3に入れる(自動組版はじめの一歩)
3) DOT3からidmlを書き出してDTPする(禁じ手だがアリ?)
4) 各コマと割付進行を分ける(ワークフローの効率化・安定化)
WEB上の原稿入稿システムがすぐに準備出来る
入力項目の変更に柔軟に対応出来る
自動組版への入り口として、まずはデータをWEB上で集める、という方法です。
これによって、
・原稿は受け取りのやり取りをしなくても勝手に入ってくる
・文字と画像が勝手に紐付く
・原稿の揃い具合が手に取る様に分かる
という効果が生み出せます。
実はこの工程はかなり重要で、自動組版のためだけではなく、DOT3で原稿を集めると、その裏側でデータの整備が行われます。
印刷物を作りながらデータの整備が行える!
これは柔軟で効率的なデータを作るという点においても有益な作業です。
少し脱線します!
データの整備は、WEBや他のシステムでデータベースを持ってるから必要ないよ、と感じる人がいるかもしれません。
では、そのデータベースを使って印刷物が作れないのは何故でしょう?
理由は、データが柔軟ではない、効率的なデータとして整備されていない、からです。
所謂データベースというのは、横一列に正規化されたデータです。
印刷物は、見る人に内容をわかりやすく伝えるために、視界に収まる範囲での視認性を追求しています。
印刷物の中の情報を紐解いていくと、横一列だけではなく、縦横列、さらにはその奥行きをも感じさせるような複雑なデータ構造が印刷物に集約されています。私見ですが、ブラウザで見る情報は平坦になっているので記憶に残りにくい、対して印刷物または誌面レイアウトされた立体化されたデータは人間の脳が解析して理解させようとするので、その分、記憶領域にフックさせられるのではないかと無学ながら想いを馳せます。
話を戻します!!
このように原稿をDOT3で集め、それを書き出してまずは手動組版する、ということだけでも効率化が図れると思います。
ただ、これで終わってはもったいないので、次の段階として、自動組版に繋げていきましょう。
何度も言いますが、この時、裏で行われるデータの整備がとても重要であり、データの整備こそ全ての効率化に繋がる第一歩です。
我らがInDesignにもデータ結合というCSVからDTPデータをザーッと出してくれるステキな機能があります。じゃあそれでいいじゃないか、と思うかもしれませんが、一発で決められるなら良いのですが、そこに修正が入ってきてとなると、結局まとめて入れたデータも個々に分かれて動きます。
これだと、取り込んで流した後の制作工程は今まで通りなので、局所的な効率化しか出来ません。
問題なのは、制作工程全体を効率化することなので、最初だけでなくフィニッシュ、さらに言えばその後の活用、管理も考えると、DOT3を使ってみるのも一つの解決策です。
DOT3にExcelを取り込んで運用するメリットは次のようになります。
・●●用、〇〇用など異なるフォーマットのExcelを取り込める
・取り込んだデータをもとにして、掲載情報としての編集が出来る
・データの変更はブラウザから出来る
・再支給されたデータを取り込み直す
この辺りは案件ごとの特性で使い方が変わります。また、支給データを事前に正規化する必要があることもありますが、原則的にもらったデータはそのまま使うというポリシーを守ることができます。
最近、弊社の制作で請けた1000ページぐらいの印刷物でこの方法を主としてDOT3を使ったのですが、正直もらったデータを取り込んでPDFにレンダリングしただけなので、
これってInDesignでも良かったかもね、とクライアントに言ってみたら、
いや、データをこっちでみて直せるから、DOT3の方がありがたい
と言われました。
この案件は、今後どう動かすか、誰も見えていなかったので、とりあえずDOT3にぶっ込みますか!からスタートしたものですが、このようにまずはデータを一つのところに集約させるというだけでも効果を生み出すんですね。
というようなことを、クライアントの言葉で気づかせてもらいました。m(_ _)m
DOT3はPDF出力が基本ですが、InDesignで開くことが出来る「idml形式」も書き出せます。
ただ、この機能は制作のフローでは使われていません。理由は、InDesignで編集した時点でデータの保証は無くなるからです。
DOT3は、データからDTPをせずに印刷用PDFにすることで効率化を実現させていますので、idmlをダウンロードして、DTPすることは本末転倒と捉えているからです。
なので、使う用途として、どうしても他で使いたいから編集できるデータが欲しい、という場合を想定しています。
ただ、今回のお話のように部分的に自動組版を取り入れたいという場合にはアリ?かも、ということで紹介します。
ボタンを押すだけなので紹介も何もないのですが、ダウンロードボタンを押せば、idmlと配置されている画像をダウンロード出来ます。
InDesignで開くと、不要なタグが入ってしまうことの方が多いと思いますが、これは致し方ないので、スクリプトなどで整形してやってください。
...と、最近思いついたのですが、校正する時用のデザインパターンと、idmlにしてInDesignで使いやすいように整形したデザインパターンを用意して、切り替えて生成してやれば良いかもなと。
まぁでもデータベースと切り離されるし、何だかなあという感じですが、全体的な制作フロー、データフローをしっかり抑えれば、とっかかりとしてはアリな気もします。
でもこれはとっかかり、一時凌ぎ的に捉えてもらって、是非DOT3で、DTPと同じくクオリティのPDFの生成に挑戦して欲しいです。やれば出来るんで。
従来の編集・制作は、ページの概念で進みますが、効率化したいのであれば、掲載情報を各ブロックとして考え、その集合体がページ、と考えてみると良いです。
これは次のような効果を生み出します。
・掲載情報のデータ化がしやすい
・分業が出来る
DOT3は、元々このブロックとページを分けて考えるというのが基本概念です。また、表現とデータを分けて考えることはデータの保守性、拡張性においても基本です。
ページレイアウトも勿論重要ですが、個々のデータも重要視することは、ただひたすら原稿をDTPしている我々も含めた制作者が考えを改めないといけないところです。
分けて考えることが出来れば、集中すべき部分が限られてくるので必然的にデータ化はしやすくなります。
分業が出来るというのは、各データを作る人、ページにどう並べるかなどを考える人を分けられる、という意味です。
制作工程中では、商品が頻繁に差し変わります。
そうなれば配置も変わるし、大きさも変わります。
従来のこの全てをいっぺんに考え、データを直し、レイアウトするという繰り返しを何度もやっていると思います。この方法はかなり非効率で、なんとかしたいと思っている人も多いかと思います。なので、この工程の改革は、効率化の大きな効果を生む可能性がありますので、是非チャレンジしてみては?と思います。
今回は、自動化・効率化の入り口として、DOT3を使って出来ることを紹介しました。
弊社制作部でも自社サービスDOT3を使い倒す勢いで、様々な案件(というか、ほぼ全部)に使っています。
ここでも紹介したように案件の特性によって、使いどころは様々です。
それを検証しながら、1クール回してみると、次からは少人数で誰でも出来る、という効果を生み出しています。
ご相談いただければ、目的に対してどういった形で取り組んでいけるか提案し、導入、稼働、効果を出すところまで含めてサポートしていきますので、やってみたいなということであれば是非お問い合わせ下さい。