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2025-03-28

Web用PDFとは〜page2025セミナー「Web用定期発行プロジェクトの全て」解説シリーズ①

Web用PDFとは〜page2025セミナー「Web用定期発行プロジェクトの全て」解説シリーズ①

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Web用PDFとは〜page2025セミナー「Web用定期発行プロジェクトの全て」解説シリーズ①

概要

「Web用PDF」とは、デジタルメディアでの閲覧や操作に最適化されたPDFのことを指します。リンクや目次機能を活かし、印刷対応も可能なハイブリッドデータとして、印刷物の情報価値をより広く活用する提案です。従来のPDFやデジタルブックとの違いを整理し、Webと印刷物を補完関係で活用する新しいワークフローの重要性を説いています。

ポイント

  1. Web用PDFの定義と機能
    リンク・目次などを備え、デジタルと印刷の両方に対応可能なデータ形式として再定義されている。
  2. PDFとデジタルブックの比較
    インタラクティブ性を持つデジタルブックに対し、PDFは編集・オフライン閲覧などの利便性で優れている点を整理。
  3. 印刷物とデジタルメディアの融合提案
    印刷物とWebは対立ではなく補完関係にあるとし、派生物ではなく主軸としてPDF活用を見直すべきと提案している。

Web用PDFとは

Web用PDFとは、Webなどのデジタルメディアでの利用を想定して作成されたPDFのことを指します。

Web用PDFの位置付け

PDFはすでに広く普及しているファイル形式ですが、デジタルメディアという視点から見ると、そのポテンシャルが十分に活かされていないのではないかと感じています。

そこで私たちは、印刷物制作の立場から次のような観点で考えました。

  • PDFをデジタルメディアでより多く活用するにはどうすればよいか
  • そのPDFを効率的に作成するにはどうすればよいか

これらを踏まえ、「Web用PDF」という新たな定義と、それに対応するワークフローを提案しています。

PDFの特徴

  • フォントを埋め込める(利用者側にフォントがなくても表示可能)
  • データ容量を軽量化できる(ネイティブデータよりも軽い)
  • リンク機能がある(外部リンク、内部リンクに対応)
  • しおり(目次)を付けられる

Web用PDFの定義

「Web用PDF」とは、以下の条件を満たすものと定義します。

  • デジタルメディアで活用可能である
  • デジタルデバイスで閲覧・操作できる
  • 印刷にも対応可能なハイブリッドなデータであること

Web用PDFの機能仕様

Web用PDFが他のデジタルメディアと連携するために、最低限備えておくべき機能は以下の通りです。

  • 他のデジタルメディアへリンクするURLが埋め込まれている
  • PDF内でページ間を移動できるインデックス(目次)が設定されている

デジタルブックとWeb用PDF

ここでいう「デジタルブック」とは、デジタルデバイス上で紙の本をめくるような感覚で閲覧できるものを指します。

現在、多くの企業がこのようなサービスを提供しており、多くのユーザーに利用されています。

デジタルブックの利用目的や利用方法は以下の通りです。

  • 印刷物から手軽に作成できるデジタルデバイス向けの派生物
  • 印刷物と同時リリースを目指し、校了後のPDFをアップロードし、リンクや目次を付加する

なお、PDFはWeb上に設置しておけばユーザーが自由にダウンロードできますが、デジタルブックの場合は、サービスの利用料やリンク設定などの作業コストが発生します。

なぜデジタルブックが選ばれるのか?

  • PDFはスクロール操作だが、デジタルブックは「ページをめくる」操作ができ、紙の本に近い体験が可能
  • ブラウザ上で閲覧できるため、専用ツールのインストールが不要
  • 目次や付箋などの便利な機能が備わっている

一方で、次のような視点もあります。

  • PDFも現在ではブラウザで問題なく閲覧可能(かつてはAcrobat Readerなどのビューワーが必要だった)
  • ブラウザで表示するPDFにも目次やコメント機能がある

このように考えると、デジタルブックでなければならない理由は少なくなってきているとも言えます。

さらにPDFは、ダウンロードして手元に保存すればオフラインでも閲覧できます。

改ざん防止や閲覧制限、コピー&ペーストの制限なども設定可能です。

それでもなおデジタルブックを選ぶ理由があるとすれば、「ページをめくる」というインタラクティブな操作感や、デジタルブックならではの機能が必要である場合です。しかし、それは本当にユーザーにとって必要なものでしょうか?

デジタルブックとPDFの比較表

機能・特性 デジタルブック PDF
ページをめくる操作×
リンク(内部/外部)
目次
閲覧ツールブラウザブラウザ/専用ビューワー
編集×Acrobatなどがあれば可能
オフライン利用
アクセス解析×
全文検索
セキュリティ設定

印刷物とデジタルメディアの間にあるもの

ここで伝えたいのは、デジタルブックを否定することではありません。

PDFでもデジタルブックでも、どちらでもよいのです。ただし、「印刷物の派生データをとりあえずデジタルデバイス用に置いておく」という姿勢は、今一度見直すべきではないかという提案です。

印刷物とデジタルメディアは、もっと密接につながるべきです。これらを全く別の世界として扱うことで、無駄な作業や時間が生じている可能性があります。

PDFをデジタルメディアで活用するには

PDFは、すでにブラウザで閲覧可能です。これは、Webのようなデジタルメディアに一歩近づいたことを意味します。

しかし、これだけでは「印刷物をデジタルデバイスで見ている」だけになってしまい、単にWebページで良いという結論に至ることもあります。

確かに、情報量や更新性ではWebに軍配が上がります。

ただし、Webは情報過多であるがゆえに、情報の選別や正確性が課題になることもあります。

その点で、印刷物は編集された情報がレイアウトされ、意図を持って構成された「スナップショット」としての価値があります。

Webと印刷物は対立するのではなく、相互に補完することで、より質の高い情報提供が可能になるのです。

まとめ

一生懸命にデザインし、組版して作り上げた印刷物です。その成果を印刷物だけで終わらせてしまうのは、制作者側としては非常にもったいなく感じます。

Web上には情報が溢れ、信頼性も曖昧になってきている現代において、印刷物は「その時点の正確な情報を、コンパクトにまとめたメディア」としての価値があります。

しかし、印刷物の制作においては「印刷の完成」が最優先となり、PDFやデジタルブックは「派生物」としてしか捉えられていないことが多く見受けられます。

今後は、より広い視点から、情報提供の手段としてPDFやデジタルメディアの活用を見直すことが求められているのではないでしょうか。

おまけ(チャッピーさんからのコメント)

率直に言って、とても良い視点だと感じました。

まず、「PDF=印刷用」という固定観念に対して、新しい視点で「Web用PDF」という定義を持ち込んでいる点が秀逸です。デジタルメディアが主流になっている今、「印刷物をデジタルでどう活かすか?」という問いに対して、単にデジタルブックに逃げるのではなく、「PDFそのものの可能性を見直す」というアプローチは、まさに今必要な視点だと思いました。

特に印象的だったのは、以下のポイントです:

  • 「PDFの特性」と「デジタルブックの特性」が実は重なっていることの指摘。比較表も非常にわかりやすく、読者に気づきを与える構成になっています。
  • 「ユーザーは本当に“ペラペラめくる感覚”を求めているのか?」という問いかけ。これは、形式や見た目だけにこだわって本質を見失わないようにという重要な視点ですね。
  • 印刷物とWebの「補完関係」の提案。これは非常に建設的で、「どちらかが勝つ」という話ではなく、共存による情報の質の向上を目指している点が好印象でした。

文章全体から、「ただの技術的な話」ではなく、制作の現場にいる人間としてのリアルな問題意識と、その課題をどう解決するかという提案がしっかり伝わってきて、とても共感できました。

 

 

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