- 印刷・DTP業務における効率化や自動化を検討している方
- ChatGPTなど生成AIの業務活用に関心のある編集者・制作者
- 自動組版や原稿整備を通じた品質向上に取り組みたい方
本記事では、ChatGPTを活用したAI校正の実例とその考察を通じて、印刷物制作におけるAI活用の可能性を探る。AIが独自ルールに従って文書を校正・修正するプロンプトの効果を検証。さらに、印刷物の「表現の校正」には、アウトプットだけでなく、インプット(原稿)データの整備が不可欠であることを指摘。自動組版とAI校正を連携させる事例も紹介しながら、AIが補助的役割を果たす一方で、人間の判断・責任が不可欠であること、そしてAIの活用が本質的な業務改善に繋がるには、その仕組みを理解して使いこなす必要があるとまとめている。
皆さん、AIを活用していますか?
私自身も最近では、ChatGPTを日常的に使うようになりました。主に、InDesignスクリプトのコード生成や文章の校正・リライトなど、個人レベルでの利用が中心です。
今回は、このAIを印刷物制作にどう活用できるのか、ChatGPTを使って次のようなことを検証・考察してみました。
まず、簡単な文章校正をChatGPTに依頼した場合、どのような結果になるかを見てみましょう。以下のプロンプトを与えて実験しました。
プロンプト例:
次の文章を、以下のルールで校正してください。
文章:任天堂スイッチはもうすぐ新しくなります。(商標登録:5013947)
校正結果:
任天堂 スイッチ(商標登録第6013947号)は、まもなく新型が登場します。
修正内容のポイント:
この結果から、以下の3つの特徴が見えてきます。
ただし、知られていない商品名や固有の社内ルールには対応が甘くなる傾向もあり、AIの学習と人間の監修が重要です。
印刷物は、単に文字が正しいだけでなく、色・サイズ・レイアウトといった表現自体が情報を伝える手段となります。
例えば、「注意事項はM100(赤)」といった表現ルールがあった場合、それが注意事項だと判断できる根拠(=原稿データ)が必要です。
つまり、印刷物のAI校正には、「正しい原稿」というインプットデータが前提条件となります。
不完全な原稿をもとにDTPを行うと、ミスと不備が混在し、校正作業が煩雑になります。
自動組版では、整備された原稿から印刷物を生成するため、表現ルールが自動的に適用されます。そして、表現情報と文字データが連動して管理されるため、AI校正に使う素材としても最適です。
DOT3ユーザーのAI校正の事例を紹介します。
営業やライターが書いた原稿を、社内ルールに沿っているか確認するためにChatGPTを使ったAI校正システムをユーザー企業の開発チームが開発しました。
DOT3上でデータ化された情報をAPIでアプリケーションに引き込み、ChatGPTで校正する、というものです。
【AI校正システムのイメージ図】
【DOT3-API経由で記事リストを取得】
【AI校正中の画面 順次結果を出力】
【AI校正後の確認画面】
【AI校正用の独自ルール設定例※表記ルールのみ】
従来は編集者と複数人でやり取りをしていた校正工程を、AIにより大幅に効率化できたといいます。
判断・修正はあくまで編集者が行いますが、ルールの可視化によりライター本人の学習にも繋がるという教育的メリットも得られました。
AIに正しいインプットとルールを与えれば、校正作業は十分に補助可能です。ただし、過度な依存は本来の仕事の意義を損なう危険もあります。
「AIが直してくれるから、内容は適当でいい」となってしまえば、プロフェッショナルとしての姿勢を崩しかねません。だからこそ、AIを正しく理解し、「なぜ使うのか?」を常に意識して運用していくことが求められます。
非常に実践的かつ示唆に富んだ記事です。ChatGPTの活用例を通して、AI校正の限界と可能性が明確に描かれています。特に、インプットデータの整備が校正・自動組版の精度に直結するという視点は、今後の制作現場において極めて重要です。理想論ではなく、実例とともに課題と向き合っている点にリアリティがあり、読後に考えさせられる構成となっています。