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2019-09-07

映画ガンホーから読み解く日本の会社に必要なもの

 

 

 

友人から、日本の企業の根本にある働き方に対する考え方と

欧米の労働に対する考え方との違いを見直すのにちょうどいい映画ということで、

1980年代のロン・ハワード監督・マイケル・キートン主演作品の映画

「ガン・ホー」をおすすめされました。

 

1980年代付近といえば、スプラッシュ、コクーン、バックドラフトなど

ロン・ハワード作品はほとんど見たはずですが、

「ガン・ホー」は、ウィキペディア先生によると、日本描写の誤解が多い為、

国内ではビデオ版だけになったそうです。

どうりで、名前は聞いたことがあるのになんで見てないんかなあと思ったらそういうことでした。

なので、当時ビデオレンタル屋さんではパッケージを見たのかも。

まあ当時は中学生ぐらいなので、見たとしても、

よくあるアメリカンハッピーエンド作品としてしか見ていなかったかもせれませんが。

 

ゲーム会社の「ガンホー」の名前の由来ともなっているらしい「gung ho」は、

献身的に働くとかそういう意味もあって、世界大戦時代に、

みんなでがんばろー!みたいな意味として米国でも使われるようになったそうです。

 

マイケル・キートン演じるハント(年代的にバットマンに見えて仕方ない)は、

失業者で溢れかえる田舎街に日本企業の工場を誘致することに成功し、

企業側から現地の労働者のまとめ役に抜擢されます。

工場は操業を始めるのですが、日本企業と現地アメリカ人労働者の考え方の違いから

様々なトラブルが巻き起こるコメディ映画となっています。

 

「会社より自分が大事」と「自分より会社が大事」の戦い

言わずもがな前者がアメリカ、後者が日本。

1986年の作品ということは2019年現在で30年以上前、

今現在の日本に、ブラック企業が存在する理由、

なぜ、他の人が仕事をしている中、残業せずに帰ると白い目で見られるのか、

なぜ、家族や自分を犠牲にしてまで働くのか、

なぜ、細かいところまで神経を尖らせるのか。

決して悪い面ばかりではないのですが、

30年前と変わっていない日本企業・日本のビジネスの

根底にあるものを見て取ることが出来ます。

 

「みんなが仕事を同じように覚えてこそチームなんだ。はみ出しモノは許さない。」

個人を無視して、ひたすら会社を優先する日本のやり方に

「俺たちのやり方でやらせてくれ」と、

不満を爆発させる現地アメリカ人に対して、責任者・高原が

「そのお陰で敗戦のどんぞこから経済大国にのし上がったんだ!」

と言い放つシーンがありますが、この言葉が日本人の血にすり込まれている気がします。

 

「怠けたら終わる」という脅迫観念

敗戦で何も無くなってしまった時代に、ただただ全てを捨ててでも

前に進むという気迫に満ちた力があったからこそ、経済大国になれたのかもしれません。

 

しかし、「この方法で日本は成功したんだ!」という言葉に対して、

ハントが「そんなに賢いなら、なんで戦争に負けたんだ!」で窮する日本人。

企業の話以前に、歴史的にそうじゃねえかと。

 

現生人類が食物連鎖の形成にかかる時間を無視して、のし上がったのと同じで、

欧米の発展に追いつくために、かけるべき時間をワープするために、

会社という宗教を優先させることによって経済大国になったのかもしれません。

 

この映画は、アメリカ主体ではないところも魅力です。

「おれたちはいい仕事したぜ」

「本当にいい仕事をしていたならどうして…」

なんで前の企業はこの土地から撤退したの?

という会話もあり、どっちもどっちで描かれていて、

それがリアリティあるストーリーとなり、

時間がたった今でも引き込まれる内容となっています。

 

「言い訳」の変化

古来から「怠けるな」と同時に「言い訳するな」というのがあったと思います。

小さな島国が、他国に対して毅然とした態度でこれたのは、

自分に対して厳しくするという教育によって、個人の成長があったからだと思います。

「言い訳」というのが個人の成長を妨げからだと思うのですが、

これが、「組織の成長を妨げるから」というように、

すり替えられてきたのではないかと思います。

 

しかし、大戦によって教育の根底までも覆されてしまったまま、

無理な経済復興をしてしまったがために、日本人のアイデンティティまで失った。

寧ろ日本人のアイデンティティが、無理してでも働く、になってしまったかもしれません。

 

「このままじゃ日本人はダメになる。これは自殺行為だ!」

1986年、今から30年前ですよ。しかもアメリカ人によって描かれた日本です。

今でこそそうかなと思えますが、バブル期にあった日本で、こんなことを言ったら

間違いなく会社クビでしょうね。

やっと働き方改革という動きが出てきましたが、30年遅れてるってことです。

 

「アメリカ人は、自分だけが特別だ、と思っている。」の教訓

働き方改革といって、会社と個人のくっつきすぎた関係性を剥がすのは良いことだと思います。

しかし、ただ働き過ぎがよくない、ということで剥がし続けると、

大事なものまで知らないうちに無くなってしまうのではないかと危惧してしまうのです。

働く人達が、自分は特別だ、やれば出来るんだ、この仕事は自分はやりたくない、

といったこの映画で30年前のアメリカ人が味わった勘違いを教訓にすべきでは無いかと思います。

 

会社や周りの人間関係より自分を優先して良いと思う。

ただ、それは「自分に負けたくない」「自分に言い訳したくない」という気持ちがあって

バランスが取れるものだと思います。

 

成長したら何がもらえるんですか?って鼻ほじりながら言われそうですが、

自分以外の相手というのは、自分に何かを与えてくれるものではなく、

自分から取りに行くことでしか、自分が得られるものはない、と思うのです。

取りに行く行為を正当化するには、どうすればいいいか。

 

この映画では約束の15,000台を生産することで、取りに行こうとします。

自分達のやり方を曲げる、というのは、双方にとって、精神的にキツイと思います。

ある意味、否定される訳ですから。

しかし、その中で、本当に違う、と思うことは主張をぶつけ合います。

それを黙って過ごすと、会社優先にどんどんシフトしていきます。

この15,000台を達成しようとするチームのモチベーションは、

「このままじゃダメだ。やってやるんだ」という気持ちが共有できたから

ではないかと思いました。

 

経営者から労働者への評価について

ラグビーは1が100になる(だったっけ?)と一緒で、

組織は、気持ちが1つになれば、そんな力を秘めていると思います。

結果を見た経営者が肩を叩きながら言った言葉が最後の締めくくりでした。

ネタバレする可能性があるのでこのへんで。

 

prime videoにありますよ。

(投稿者:川原)


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