今回は、「文字に長体をかける」というよくある作業をピックアップして、効率化する方法をDOT3(自動組版クラウドサービス)でどうやっているかも踏まえて解説したいと思います。
自動組版については、「自動組版とは何か(印刷業界外向け)」を参考にしてください。
ポイント
・面倒な長体調整ってなんとかならないの?
・InDesignであればスクリプトが便利
・DOT3はもっと便利
印刷物は、WEBとは違って紙面サイズという制約があるので、「ある範囲にモノ(文字・画像)を収める」ための調整作業が必要となります。
例えば、縦横50x50ミリの範囲に文字を入れたいけれど、文字がはみ出してしまう、といった場合に、「文字の横幅を小さくして収める」という調整作業を行います。
文字を小さくして入れる場合もありますが、デザイン的に文字サイズのバラツキはよろしくないので、長体をかける方が優先となります。
InDesignやIllustrator、Wordなどのドキュメント作成ツールでは、長体を数値で変更します。
自動で収まる長体率に一発でしてくれる機能はないので、数値をカチカチ変えながら「おー入った入った」みたいな感じで作業します。
例)InDesignの場合(文字を選択して、文字パネルで長体を設定する)
「このぐらいかなぁ」とか考えながら、マウスでカチカチ数値を変えるのは、地味で面倒です。僕は苦痛です。
文字数が変わったらやり直しになることと、作業中にどこかを間違えて触ったり、調整モレがあったり、そしてそれを校正する方も大変…ですよね?
なので「なんとかなんないの?」と考えている人は多いと思います。
InDesignでは、次のようなスクリプトで、ちょうど良い長体率に一発でしてくれます。
・対象:ドキュメント全体もしくは選択されたテキスト枠
・検知:文字が溢れているところ
・動作:入りきるまで長体率を下げる
このスクリプトは、汎用的に使えるので、うちの制作現場でもいろんな案件で使っています。
InDesignの場合、溢れている箇所をエラーとして出してくれるので、チェックしやすいのも助かります。
DOT3では、テンプレートに長体設定を仕込みます。
テキスト枠のスクリプトラベルの記述で長体を制御します。
(DOT3のテンプレートはInDesignで作成します。スクリプトラベルはInDesign標準機能です。)
例えば、
「OVERFLOW : full」
と書くと、テキスト枠に収まる長体率が自動でかかります。文字が増減しても気にしなくても勝手に長体をかけてくれます。
この設定は、テキスト枠ごとに設定できるので、「ここは長体にしたくない」という場合は、この設定をかかないようにすればいいだけです。
自動組版の結果例)OVERFLOW : full
「長体は80%までにしたいんだよね」という場合は、下記のように書きます。
OVERFLOW : full_80
自動組版の結果例)OVERFLOW : full_80
このように、テキスト枠ごとにルール(組版仕様)を設定できます。
・入るまで長体をかける
・●%まで長体をかける
・長体をかけない
これだけでも効果が出ます。
・作業時間の削減
・誰がやっても同じ結果(校正も楽!!)
制作あるあるですが、途中でルールが変わったりすることが多々あります。
InDesignの場合、対象箇所をチマチマ直すしかありませんが、DOT3の場合、テンプレートのルール設定を変更して、再レンダリング(PDF生成)を実行すれば新しいルールが適用されます。
作業する人は、ボタンを押すだけなので細かい話や操作は不要です。
上記の「full」は、主に文章に対してですが、
行ごとに長体をかけたい場合もあります。
この場合は、multiを使います。
OVERFLOW : multi
行毎に収まる長体率になるのでバラツキは発生しますが、こういう使い方もよくあります。
自動組版の結果例)OVERFLOW : multi
文章の一部に長体をかけたい場合は、タグを使います。
入力欄で、以下のようにタグを追加します。
DOT3の入力画面の例)
自動組版の結果例)
参考)タグを使った追い込みの入力例(追い込みタグ、文字間タグ)
{追}追い込んで1行で表示したいところ
一部だけ{ls:-0.1em}文字を詰めたい箇所{ls}に使う文字間タグ
長体調整の作業は、やってみると分かるのですが、とても面倒です。
しかもこれが一回で終わらず、文字数によって長体率が違うので、文字数の増減があれば、やり直しになります。
この「やり直し」というのが、効率の低下、ミス発生に繋がっていることは明らかなので、何かしらの手段を考えないといけないですね。
DOT3では、「テンプレートにルールを仕込む」という方式(他に「フィルタ機能」でのルール適用もあり)なので、作業する人も楽ですし、校正する人も楽になります。
このことは、「人が細かい仕様を把握しなくてもいい」となるので、専任の担当者でなくても「誰でも出来る」ということに繋がっていきます。